代言

4/10

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
不審に思いながら、村の中へ歩を進める。 「それで、どこへ行きたいんだ?」 バケモノが問うと、子どもは道の先を指さした。 子どもに従い、まるで死んだような村を歩く。家々に人の気配はするが、何に怯えたのか外に出ることはない。 「ここか」 子どもが立ち止まった家の前に立ち、バケモノは軽く扉を叩いた。 返事もなかったので、バケモノは勝手に扉を開ける。鍵がかけてある様子もなく、バケモノも人の気配を感じなかった。 「……何用だ」 嗄れた細い声が響き、バケモノは少なからず驚いた。 大きな部屋がひとつだけある小屋の奥、暗がりに若い男が座っていた。 「いや、えっと……」 「この村には何もない。奴隷にするにも、呪いが酷すぎて売り物にもならないだろう」 呪い?とバケモノはおうむ返しに返事をする。小屋の中へ入り、勝手に男の前に座る。 男は、まだ産まれて20年も経っていないような若者だった。 だが、肌は汚れ、汚ならしい格好の中で、目だけがギラギラと輝いていた。 「ああ、呪いだ。ここは、8年前に呪われたのだ」 男は、枯れ木のような手を強く握った。反射的に、バケモノは子どもの手を握りしめた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加