代言

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「8年前、この近くの研究所から、膨大な呪いが溢れ出した。その影響から、この辺りは呪われた土地になってしまったんだ」 深い絶望を織り混ぜたような話を聞き、バケモノは顔を歪ませた。 呪術は、一歩間違えれば悲劇を起こす。それは人間もバケモノも同じだ。 「だから、この辺りはもう、何もない。この村で一番若いのは私だ。もう、この村は存続を諦めたんだよ」 生きることを諦めた村。バケモノには、そんなものはわからない。 一人で、独りで生きてきたバケモノには、誰かを不幸にすることを躊躇ったりしない。 だけど、 その小さな手だとしたら。 「……俺は、お前たちの生き方に口出ししない。悪かったな、邪魔をした」 バケモノは立ち上がり、子どもの手を引いて村から出ていく。帰りの道でも、誰にも会わなかった。 「それで、」 姿を戻し、バケモノは子どもを背に乗せる。 「どうしたかったんだ?」 子どもは、森の奥を指さす。バケモノは羽を広げ、指さされた方角を目指した。 すぐに、小さな研究所らしき建物を見つけ、そこへ降りる。
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