代言

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暗い森の奥、崩れかけた廃墟のような研究所だった。 「なんだ、ここに連れてきたかったのか」 子どもは頷き、先にスタスタと入っていく。バケモノも長い羽根をしまうために人の姿となり、子どもに続く。 「実験施設……でもないか、魔術臭え」 薬品と、人間が使う半端な魔法臭が漂い、バケモノは顔をしかめる。 ひときわ大きな部屋に着くと、バケモノはとてつもない鳥肌が立った。 呪いが幾重にもかけられた跡があり、魔術の臭いが強くなって頭を叩く。 「げほっ……なんだ、ここ」 子どもは躊躇もなく進み、実験台のような場所に置かれた古い本を持った。 「なんだ、その本。読めってか」 無言で差し出される本を掴み、パラパラとめくる。どうやら、日記のようだ。 「えっと……春の中日、晴れ。子どもが産まれた」 文字も、どうにかバケモノに読めるものだった。古びてカサカサになっているが、朗読に問題ない程度だ。
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