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僕が答えると、彼女は少し残念そうにとても嬉しそうに言った。
「そうですか、貴方の探し物はここでは見つからなかったのですね」
彼女と話している間も太陽の光はずっと強くなり続けて、目も開けられなくなっていく。
「でも大丈夫、きっとソレはこの世界になくて、貴方はまだこの世界を必要としていないのです」
だから…と彼女は言う。
「元の世界にお帰りなさい。貴方にとってこの世界が必要になるまで、この世界は貴方を待っていますから」
「でも、帰り道がわかりません。僕は自分が誰だかもわからないのに、帰れません…」
もう目を閉じていても光は強引に視界へと割り込んでくる。
「大丈夫。ほら、貴方の右手が帰り道を知っていますよ」
気が付くと、太陽の光と暖かさよりもずっと優しい温もりが僕の右手から溢れていた。
「何年先か私にはわかりませんが、貴方が心から望む時、またこの世界に来ることになるでしょう。それまで、しっかりその右手を繋いでいてくださいね」
全身の感覚が右手の温もりに溶けていく最後、彼女の優しい声が聞こえた。
「見つけたら、手を放さないでくださいね」
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