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目を開けて、まず視界に入ったのは正面に真っ白な天井と、左の端にカーテンの揺れる大きな窓、右の端に掲げられている僕の右手だった。
部屋の中は暗くて、窓からは甘い香りが風と共に流れ込んで来る。左肘に何かが刺さっている感じがするのは点滴かな?
それから右手に全身を溶かした温もりを感じた。
うまく動かない首を回して右を向くと右肘が垂直に曲がっていて、その先にある手を両手で握れらていた。
眠っているのだろうか、顔を伏せたまま微動だにしない彼女のベッドに乗せられた両肘に支えられて、僕の前腕は天井に向かっていた。
風に揺れた彼女の髪が露出している僕の腕に触れて、少しくすぐったい。
起こすのは申し訳なかったが、眠っているのに握られたままの右手を少しだけ強く、でも優しく握り返した。
1回だけでは起きてくれないので、何度かゆっくりと握り直すと、少し長めの前髪の下で彼女は目を開いた。
だから僕は、手を握り続けた。
それに気付いたのかゆっくりと顔を上げて、寝ぼけ眼で僕の方を見た。その顔は僕の知っている彼女よりもずっと大人びていたけれど、見間違えることはない。
彼女が二人で握る手を見てから、僕の顔の方へと視線を移すのを少しだけドキドキしながら見守った。
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