歪曲~帝と義春~

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 ゆっくりと、両手を地面に付け、頭を下げる。  そして、言葉を紡ぐ。 「義春様、逆らって申し訳ありませんでした。あなたが一番強いです」  くっ!  いざ言うとやるせない気持ちになる。 「いいねぇ! いいねぇ! 県内最強とまで呼ばれた男が俺に屈服するなんて、すげぇいい気分だ!」  黙れ。  誰が好んでこんなことするかよ。  俺はお前の為にやってるんじゃない。  仲間の為にやってるんだよ!  死ぬ前に、こいつは殺しておかなきゃ。  決意した。  今だけだ。  今だけこいつの言いなりになって、仮面を被って、媚びを売ってやるよ。  今に見とけ。  すぐに地獄に連れて行ってやるからよ。  精々、楽しんどけよ。  ゆっくりと訪れる死まで……。
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