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家に帰り着くや否や、またあの盛大な出迎えを披露される。頭を抱えながら赤い絨毯を歩き、頭痛に悩まされながら玄関を通ると、頭痛の種がまたしても飛び付いてきた。
「おっかえりー要ちゃーん! 今日は遅かったねえ!」
顔は細くおっさん顔、髪は七三分けで和服姿の優男。こんなのが武家の当主で良いのか? という感じの見た目軟弱野郎。しかしこんなんでも麒島家初代当主、麒島 漕龍その人だと言うのだから世の中間違ってる。
その父親が、今まさに娘へ飛び付こうとしている。それは見事なダイブだ。言うなれば、ルパンダイブ並に綺麗な弧を描いて飛んでくる。
瞬間、要が半歩下がり、僅かな距離を取る。
「――せいや!!」
一蹴。読んで字の如くとは、まさにこの事。飛び付いてきた漕龍の顔に、見事な回し蹴りをお見舞いする。堪らず、漕龍の体が壁に激突した。
「なんでわざわざ抱き付こうとするか!」
「いやほら、要ちゃん。親子のスキンシップは大事だよ?」
「うるっさい! 毎度毎度セクハラ染みたスキンシップなら要らないから!」
「何を言ってる要ちゃん」
そこで、漕龍の顔が険しくなる。怒った表情で、要を睨む。身の毛もよだつ殺気を肌で感じ、要の意思に関わらず武者震いを起こした。
「お父さんからセクハラを取ったら何も残らないじゃないか!」
「それが真顔で娘に言うセリフかぁぁあ!」
「痛い!」
本日二度目のハイキック、この場合は仕方ないだろう。実の父親にこんな事を言われたら、誰でも同じ行動を取る。
「あと! なんでわざわざ学校にまで迎えを寄越すのよ! 私高校生だよ!? 恥ずかしいから止めてよね!」
「いやだわ奥さん、実の娘に近付く雑草を刈る為に決まってるじゃありませんか」
突如おばさん口調で喋り出す漕龍を見て頭痛が止まらなくなったらしい要は、フラッと体が揺れたかと思ったら本日三度目のハイキックを漕龍に浴びせた。
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