二重人格

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 ☆★☆★☆  朝の目覚め。昨日と同じく小鳥がさえずり、また昨日と同じ朝陽が登る。机の上に置いてある目覚まし時計が鳴り響き、その騒音のおかげで目が覚め上半身を起こす。  起きると同時に欠伸が出て来るのを噛み締めて殺し、辺りを見回し自分の周りを確認する。  特に異常が無いことを確認すると、眠い目を擦りベッドから片足を下ろし立ち上がる。  と、今の時間を確認する。針は五時三十分を指しており、学生の目覚めにしては少しばかり早い朝だった。  早いのにも意味が無いわけではなく。要は昔から家事全般をしていた為、従者や親の朝ご飯を作るのが日課になった。  いそいそとエプロンを着け、台所へと立つと気合いを入れる。要の家には三十人以上の人間が暮らしており、その人間達にもちゃんと食欲というものが存在する。  以前に寝坊して作り忘れた時は、みんなの落ち込んだ顔があまりにもだったので、二度と寝坊しない事を勢い余って約束してしまったのがそもそもの始まりだった。  テキパキと料理を作っていく。材料は既にあり、それを調理するだけでご飯は完成する。材料はいつも従者達が買い足すようで、材料が無くなるという事がまず無かった。  と、作っている内に時間は過ぎ、もう一時間が経過しようとしている中、料理が完成する。出来た料理を皿に盛り付け、ラップをしてテーブルの上に置いておく。  その後エプロンを外し、片付けをしてから学校へ向かうのだ。時刻は六時半。まだまだ早いのだが、それにもちゃんと理由がある。  ガスの元栓などを確認した後、学校へ向かう為に玄関へと向かう。辺りを見回しても誰一人として居ない。  それを見計らったかのように、靴を履き、静かに戸を開け表に出る。誰も居ない。それが要の喜びだった。 「毎朝リムジンで登校はまずいでしょ……やっぱ」  笑顔が引きつる。毎朝出ると従者達が総勢で出迎えをし、リムジンによる登校というありがちな事をやるのだった。  だが、今は従者など居ない。居るのは要一人。それも学校へ行く準備万端の態勢だった。  一人ガッツポーズをして、喜びを受け入れる。なんと清々しい朝だろうか、と一人で喜びに浸る。  だが、現実はそんなに甘くなかった。  家の門を出ると、あるのは黒いリムジンと真っ黒なスーツのお兄さん達。  まず間違いなく何時もの人達だった。
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