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『あ、いたいた!』
あいていたもう片方の手が、暖かい温もりに包まれる。
いきなりの出来事に、俺は目を丸くして振り返り、
…そこに立っていた男子生徒に、目をぱちくりさせてしまう。
『良かった。いきなりいなくなったので、心配したんですよ』
その声の主が、古泉だった。
その時の俺は、古泉とは赤の他人に近く、正直何を言っているのか理解できなかった。
というか、それ以前に、なぜ自分にそんな風に話しかけてくるのかがわからなかった。
『僕の連れが迷惑かけたみたいで、すみません』
『は?何だお前…』
そこまで言って、はっと先輩方が口を閉じる。
『…それでは』
先輩の手が離れたのを見届けると、古泉は鋭かった視線を戻し、俺を引いて学校を出た。
『あの…』
『大丈夫でしたか?』
少し歩いたところで優雅に振り返ると、古泉はそう言って、優しく俺に微笑みかけてくれて。
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