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シャッシャッ…―――
大きなキャンバスに
小さな背中を丸めて
部屋に響くのは
鉛筆の芯が擦れる音
真剣な眼差しで
目の下に睫毛の影が落ちる
綺麗な手は
それでも女性のものとは違い
まるで職人のように美しく
もうすでに日が傾いて
太陽が赤々と染まる頃
部屋が薄暗くなって
それにも気付かない
きみの横顔
「なに描いてるの?」
シャッシャッ…―――
僕の言葉は
きみには届かない
そんなのは知ってるけど
でもいいんだ
僕にはきみの言葉も
鉛筆がキャンバスに擦れる音も
全部聞こえているから
ベッドに座って
きみの丸い背中を見つめる
ゆっくりゆっくり流れる
この時間が好き
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