1. まぼろし

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シャッシャッ…――― 大きなキャンバスに 小さな背中を丸めて 部屋に響くのは 鉛筆の芯が擦れる音 真剣な眼差しで 目の下に睫毛の影が落ちる 綺麗な手は それでも女性のものとは違い まるで職人のように美しく もうすでに日が傾いて 太陽が赤々と染まる頃 部屋が薄暗くなって それにも気付かない きみの横顔 「なに描いてるの?」 シャッシャッ…――― 僕の言葉は きみには届かない そんなのは知ってるけど でもいいんだ 僕にはきみの言葉も 鉛筆がキャンバスに擦れる音も 全部聞こえているから ベッドに座って きみの丸い背中を見つめる ゆっくりゆっくり流れる この時間が好き  
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