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私の言葉にクリスが顔を上げた。
凄く苦しそうな顔で私を見つめる。
「そんな事言ったって、仕方ないだろ!!
兄様にも、母様にも、父様にも、誰にも盾突いちゃいけない!!三人が決めた事は絶対なんだ!!
俺一人頑張っても、処分されて終わる!!婚約者候補には手を出しちゃいけない!!これは絶対的な鉄の掟なんだ!!」
クリスの言葉を聞いて、やっぱり普通と違うんだって理解した。
お金持ちはどうしてこんなにもバカなんだろう。
私は睨みつけるようにクリスを見た。
「普通のやり方が通らないのはわかった。だからって私は諦めないよ」
「お前な……!!」
「あんたがそんなくだらないしがらみに捉われてるなら、私がなんとかしてあげる!!私があんたを助けてあげる!!」
「桜……」
「私がこんなくだらない勝負に勝ってあげる!!要は、リズとロイ王子が一緒に居る時間を作らなければいいんだ!!
私や他のお嬢様達がロイ王子の婚約者になれば、もうあんたは自由に動けるんだよね!?」
「そりゃそうだけど……」
「だったら私、頑張るよ!!あんたの気持ち、無駄になんかしないんだから!!」
そう言うとクリスの頬に涙が伝った。
真っ直ぐ私を見るその目。
私はクリスに笑いかけた。
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