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「私、ロイ王子にとって退屈な存在なんじゃないですか?」
「え?」
目を瞬かせるロイ王子。
ここで負けるな私。
この落ち着かない空間からの脱出を試みるんだ私。
だいたい、私にロイ王子とのデート権なんかいらないって。
ロイ王子の婚約者なんかなるつもりないんだから。
庶民の私とロイ王子が婚約者って、どんだけおこがましいんだ。
ジッとロイ王子を見つめていると、ロイ王子が吹き出した。
え?
「アハハ!!いや、ごめんね桜さん」
「ロイ王子?」
「そうだ、桜さんはそういう人だ」
「え?」
「お金も、地位も名誉も、いらないんだもんね」
ニッコリ笑うロイ王子。
どうして、知ってるの?
私が、そんなものに興味ない事……。
私は目を見開いてロイ王子を見た。
「こんな時間、桜さんにとっては不要な時間だよね」
「いえ……」
「でも、桜さんに一緒に居てほしいんだ」
「え?」
そう言うとロイ王子が空を仰いだ。
「こんなゆっくりした時間、最近なかったから……」
空を仰ぐロイ王子の横顔は、綺麗で、そして、少し悲しそうに見えた。
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