1.事の発端

2/17
前へ
/91ページ
次へ
ある日の午後、景子はいつものように自転車に乗り買い物へ出かけた。 「今日の晩ご飯は何にしようかしら」 毎日毎日、晩飯の献立を考えるのが主婦の仕事。 料理が苦手な景子にとっては、それだけでも疲れるのである。 しかし、夫である健一は文句言わず何でも食べてくれる。 景子と健一は結婚して3年目。 まだ子供は居ない。 交際期間は6年と長かった為、お互いの事はよく分かっていた。 とはいえ、やはり男と女であり元は他人である。 喧嘩もするが、意地っ張りな部分がある景子。どちらが原因であっても、必ず健一が折れて仲直りするのである。 景子のそんな性格を知っている回りの友達なんかは 「景子と結婚した健一は偉いねー」 と、口を揃えて言うくらいだ。 けど、健一にとってはそんな景子が大好きであり、守りたい存在なのだろう。 そしてまた、景子にとって人生初めて付き合った人である健一を、大切にしていたのだった。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1109人が本棚に入れています
本棚に追加