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それはめっちゃ寒い季節やった…。
寒空の中、幼なじみの良太郎の気遣いでグルグルに巻いてくれたマフラーを着けて、上の空で、俺は人を待っとった…。
暫く、色々な事を考えとると、
「お待たせ、待った?」
優しくて心地好い声に我に返り顔を上げると、浦がいて、顔が真っ赤になった…。
「金ちゃん、顔赤いよ?
どうかした?」
「あ……か、カイロ付けたのが熱うて…。」
不思議がる浦に俺の気持ちを気付かれへんように、笑いながらごまかすと、
「そっか、金ちゃんらしいね。」
と、優しく笑うので、俺の心臓は爆発しそうなくらいドキドキしとった。
それから、少しおしゃべりをして、時々目を合わせ、二人で笑いながら、楽しく過ごすと、あっという間に時は過ぎ、帰る時間になり、浦は、
「じゃあね、金ちゃん、またね。」
と、言うと、ニッコリ笑いながら手を振り帰って行った。
それに応える様に俺も浦に笑いながら手を振り返すと、俺はまだ帰らず、そのまま、まだ浦の温もりの残るベンチを軽く撫で、ため息をついた。
俺は…誰が見ても解るとおり、浦が大好きなんやけど、俺は、兄弟が、女ばかりの3人でどうしても後継ぎがほしい父親が、末の俺を男として育てた。
せやから、男らしくなる為に空手や剣道を真剣にやり、男として恥ずかしくないように過ごしていたので、ますます普通の女としての振るまいや、オシャレなんぞにはすごく縁遠くなってもうた。
今の俺は、背も高いし、まあ……胸はそこそこやけど、身体は筋肉質でガタイもハッキリ言ってデカイから、どう見ても女には見えへん…。
せやけど、やっぱり、心は女やねんな…。
クラスで一番人気のある浦を好きになってしもうた。
絶対に実るわけないの解ってながら…。
せやから、せめて、友達でもええから、浦と仲良くなりとおて、浦の好きな物や興味のある物を調べ、共通の話題を作り、すごく仲良しになれた…。
でも、それが、皮肉にも、楽しい事と同時に辛い事も知る事になる…。
俺だけに打ち明けてくれた秘密……。
浦は、どうやら好きな奴がおるらしい。
誰なんか、聞こうとずーっと問いただしてるんやけど、絶対に教えてくれん。
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