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そんな中ロキの怒声に少年はひっと息を飲むと路地に走り込んだ。路地の中を駆けていき建物の突起を足場に軽々と建物を上っていく。
「ここまでおいでよ、おじさん達」
へへ~ん、とにやりと笑うと少年は建物の向こう側へと姿を消した。
「ふざけやがって」
ぎりぎりと音が出るほどに唇を噛み締めるロキ。その表情には怒りよりも嘆き、哀しみ、焦燥が浮かんでいた。
「ちっ、フェンリル追うぞ」
『大人げないなあ』
「煩い、お前なら匂いで追えるだろ」
『へいへい』
からかうような口ぶりのフェンリル。いつものように軽く流すこともロキは今できないようだ。
やれやれといった感じでロキの指示に従うフェンリル。人間ならば肩を竦めているところだろう。ふんふんと鼻を鳴らし空気の匂いを追うフェンリルはすぐにうぉんと吠えた。
『こっちや』
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