Prologue

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しゃらり 彼女が身を起こすと鎖が軽い音を立てた。振り仰ぐ位置にある窓からは大分低くなった月の影が射している。 まだ夜明けには間があるようだ。 それでも一度醒めてしまった意識に彼女は再び眠ることを諦めた。 寝台から降りる。裸足には少々床が冷たい。一歩一歩慎重に踏み出す。近頃めっきり体力が落ちてしまい体が重い。 彼女が一歩踏み出す度に鎖が軽やかな音を立てる。 やがて、彼女は空間を取り囲む鉄柵へとたどり着いた。そっとそれに手を触れてため息をついた。こつりと額を着けて、静かに瞳を閉じた。 右足に取り付けられた漆黒の鎖。それは彼女がその空間から出ることを頑なに拒み、そしてそれは彼女の魔力をも奪う。 己の境遇に関して憤る時期はとうに過ぎた。こうなることは最初からわかっていたのだから。覚悟は出来ている。 けれど。 ぎり、と彼女は鉄柵を握りしめた。開かれた瞳には強烈な意志が宿る。 (あの子たちは……) 彼女は鉄柵の先を見下ろした。 (必ず助ける) 月が見下ろすその部屋には巨大な鳥かごが無数に吊り下げられていた。
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