第1章

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テーブルに額を付けてなにやらぶつぶつ呟くトールをよそに、黙々とロキは自分の食事を続けた。その間、机の下の狼は大人しくしている。トールの反応を見るのに飽きたらしい。 やがて、彼の食事が終わり、席を立とうとした時点でようやくトールは復活した。 「もう行くのかよ。つうか俺に対する慰めの言葉とかは無しかよ」 とぼやくトールにふっと笑い無言でロキは店の戸口へ向かう。 「ちょっと待て、俺も行くって。おっちゃん、ごっそさん! また来るぜ」 慌ててトールも席を立つ。 「おうよ、楽しみにしてるぜ」 店主の威勢のいい声を背中に、彼らは雑踏へ足を踏み出した。 _
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