第一章

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引き摺る感じに倒れたわけではなく、本を倒したような、擬音で言うとズザザァァではなくバタンという音を僕は体を張って奏でた。 訂正。 奏でさせられた。 何だよ、お前っ! いきなり失礼を言葉と身体で示しやがって! 僕に何の用だ!? 倒れながら僕は白黒女子に文句を浴びせた。 「まー、待ちなさいよ」 親しく言っても、僕はお前と親しくないし、親しくなりたくないから無意味だぞ。というか、ムカつくだけだ。 「あらあら。太田胃散でも飲んだ方がいいんじゃない?」 ムカついているのは胃じゃなくて頭というか気分なんだよ。 「そんな塩辛みたいな顔しないの」 どんな顔だこら。塩辛に罪はないんだ、そんな言い回しするんじゃねぇ。 「そうね。貴方なんかと比べられちゃあ塩辛に失礼よね。謝るわ」 よし、次は僕に謝れ。 白黒ナオンは謝罪の代わりに、立ち上がって僕に手を差し出してきた。 なんだこいつ。 人を倒したと思ったら、起き上がらせてくるとは。 行動の前後が一致していない。  
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