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手袋をした男の手が、いきなりドアの隙間から侵入し、私の手首を捕まえ様とした。
「キャア!!!!」
私は、近所迷惑も考えずに、人生で一番大きな悲鳴をあげて、ドアから離れた。
…それも、まずかった。
玄関の外から現れたその手は玄関を押さえ、…信じられない事に、もうひとつ巨大なハサミが現れ、ドアチェーンにその刃をあてた。
名前がわからないその巨大なハサミは、直感で、ドアチェーンをも切るものだと感じた。
逃げたいのに、足がすくんで動けない。
そもそも単身者用のアパートの2階、ベランダにでたとしてもどうやって下に降りればいいというのか。
自分の意思とは関係なく、体がガクガクと震え出した。
思った通り、その巨大なハサミはドアチェーンを噛み切った。
ゆっくりと、ドアの向こうの闇が視界の中で広がっていく。
先程の様な悲鳴を今こそあげたかったが、歯がガチガチと鳴るだけだった。
ドアから入ってくる闇を遮るようにして…想像通りの、けれども願ってはいなかった、男が現れた。
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