2/5
前へ
/21ページ
次へ
手袋をした男の手が、いきなりドアの隙間から侵入し、私の手首を捕まえ様とした。 「キャア!!!!」 私は、近所迷惑も考えずに、人生で一番大きな悲鳴をあげて、ドアから離れた。 …それも、まずかった。 玄関の外から現れたその手は玄関を押さえ、…信じられない事に、もうひとつ巨大なハサミが現れ、ドアチェーンにその刃をあてた。 名前がわからないその巨大なハサミは、直感で、ドアチェーンをも切るものだと感じた。 逃げたいのに、足がすくんで動けない。 そもそも単身者用のアパートの2階、ベランダにでたとしてもどうやって下に降りればいいというのか。 自分の意思とは関係なく、体がガクガクと震え出した。 思った通り、その巨大なハサミはドアチェーンを噛み切った。 ゆっくりと、ドアの向こうの闇が視界の中で広がっていく。 先程の様な悲鳴を今こそあげたかったが、歯がガチガチと鳴るだけだった。 ドアから入ってくる闇を遮るようにして…想像通りの、けれども願ってはいなかった、男が現れた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加