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「よかったよ、姉貴が無事で…」
翌朝、引っ越しの準備をしながらヨウ君が安堵の溜息をついた。
「うん、ありがと。ヨウ君のおかげだよ~」
私も簡単な荷物を捌きながら、心から感謝を捧げた。
私が、洋介と名乗る男にいままさに襲われそうになった時。
ピンポーン…
チャイムが、鳴った。
男が驚いて玄関を凝視した瞬間を狙って、私は男の横を素早く通り抜け、玄関の外に踊り出た。
外にいたのは、ヨウ君…ではなく、警察だった。
実は私は、最初に変なチャイムが鳴った時に、もう一度ヨウ君に電話を掛け…携帯を繋げたままにしておいたのだ。
筒抜けの会話を聞き、これは危ないと察したヨウ君が機転を利かせて110番し、現地警察が駆け付けた…と、こういう訳だ。
男は一先ず不法侵入で現行犯逮捕され、その後取り調べを受けている。
私は、両親から2時間かけてでも家から大学に通えと説得され、翌日…つまり今日には引っ越しする事になったのだ。
引っ越し屋さんは荷物と一緒に出発し、私はヨウ君と一緒にガランとした部屋で、不動産屋さんを待った。
待っている間、忘れ物がないか見回した。
うん、なにもない。
不動産屋さんがやってきて、全ての処理を終わらせた。
これで、怖い思いをしたこの部屋とお別れか…
そう思った時。
不動産屋さんがふと思い出した様に、
「そうだ、これ玄関に挟まってましたよ」
と、折り畳まれた、A4の紙を渡してきた。
なんだろ?
私は、それを手にとり、書いてある文字を読んだ。
「昨日は大変だったね。君が無事でよかった。緊急時に駆け付けられないなんて、彼氏失格だな。一先ず弟くんに感謝。これからは、俺が守るからね。ゼッタイ、オレガマモルヨ。」
顔から、血の気が引くのがわかったー…
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