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「どこなんだろ……、ここ…………」
患者服を着た少年は誰とでもなく、一人ごちた。
年は十代の中頃か、後半ほど。よくいえば無造作ヘアー、悪くいえば寝癖のついた髪は彼の鰻重を覆い隠している。
細い体躯に、人目を引く精悍な顔立ちだが、その雰囲気は年不相応で余りに幼く、あどけない。
壁に手を付きながら、引きずるように歩く。
「バンチョーも、あー君も、どこ行っちゃったんだろう……」
不安からか、思考せずとも視線が足元へ向いてしまう。
周りに、自分を知る者も、自分が知る者も、誰一人いない。
否、一人ではない、独りなのだ。
なんとなくそんな事が分かって、悲しくなった。
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