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「いやぁあぁ」
交通事故に巻き込まれそうになった私を助けた彼の身体は、透き通って、足元から消えかかっていた。
「大丈夫。
俺は死神だ。死ぬんじゃない、消えるだけだ」
涙腺が壊れてしまったんじゃないかと思うくらい涙が頬を伝い、顔がぐちゃぐちゃになる。
「もう会えないならどっちだって同じことよ。
あなたのいない世界でなんて生きていたくない」
他人から見れば、私は1人でしゃべっている変人だったに違いない。
しかし、今の私は周囲を気にするほどの余裕がなかった。
「そんなこと言うなよ。
俺のために生きて。
俺の知らないこの世界をもっとその目で見て。
……世界は、こんなにも色鮮やかなんだから。
俺のために泣かないで。
幸せになって欲しい。
俺はいつでもそばにいて祈っているから……」
ニッコリ笑った彼は、そのままスッと消えていった。
銀のネックレスが地面に転がり落ちた。
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