アニー

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ひつじちゃんは、無言でエクレアをむさぼっている。 クリームやチョコレートが口についているがお構い無しだ。 僕は、さっきから気になっていることがあった。 「ひつじちゃん、」 「…」 「ひつじちゃんてば」 「…」 「ひつじちゃん、」 「…あに」 ひつじちゃんはようやく顔をあげて、口をもごもごさせながら訊いた。 ―たぶん、「なに」と言いたかったんだろう。 「これ、見てもいい?」 ぼくは、赤い表紙の分厚い大きな本を指差して訊いた。 「ひいよ」 ひつじちゃんはまたもごもごさせながら答えた。 ―たぶん、いいよと言いたかったんだろう。
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