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「命……ですか」
やはり幽霊だ。
「あ、別に直接生命とか魂じゃなくても良いのよ。
煙でも全然いいし」
「は?」
「ほら、仏壇に線香やんじゃん、あんな感じ」
幽霊は腕組みをしながら語っている。
「もしくは匂いでもいいんだけどさ、あんまりお腹膨らまないんだよねぇ」
どうやら幽霊にも満腹という概念があるようだ。
「魂がメインディッシュで煙が前菜で香りがデザートみたいな」
魂>煙>香り
ということを説明したいらしい。
「とりあえず何か無いの?
お香とかさ」
キョロキョロと幽霊は部屋を見渡している。
私は引き出しを開けて小さな箱を取り出す。
そこから取り出したコーン型のお香に火をつける。
「あー、いいねぇ。しみるねー」
幽霊はふよふよ浮きながら
煙を自らに取り込む。
「タバコでもいんだけどねー。
吸わないの?」
「いや、未成年ですから……」
「珍しいねぇ、今時」
幽霊は煙を食べながら世間話をしてくる。
私は煙をかぎながら
そのまま寝てしまった。
「いいなぁ、楽しいなぁ」
これが私と笑う幽霊の初めての思い出。
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