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建築途中で、
放置されたそのビルは、
俺と彼女が、
初めて、
キスした場所だった。
あの時流れていた
優しい空気
そして
強い風の音を思い出していた。
記憶の中で
彼女が
何かを言おうとしていた。
でも
何を言おうとしたのか
思い出せず、
思い出そうとするだけで
何故
こんなにも
切ないのか…
俺の記憶は
そこら辺の事を
探られる事を
拒否しているかの様だった。
ねぇ、ユウカ
お前は何を言いたいの?
俺は何故、
それを忘れたの?
携帯を耳に
泣き叫ぶ声に
上の空で、俺は
自分の手を眺めた。
何故だろうか。
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