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数日後、
彼女の告別式に、
親友であるイズミは、
母親に、抱えられて、
現れた。
イズミは、
普段高い声で、
よく喋る子だった。
そのイズミは、
表情を無くして、
こう言った。
「スイカ…、
落とした時みたいな
音がしたの…」
彼女の母親が
彼女の口に手をやり
言葉を止めた。
それでも
彼女は繰り返した。
「スイカ…食べられなくなっちゃったよ」
イズミの黒目は
開いているけれど
何も見ていない。
まるで、 ガラス玉で作られた
人形の眼球の様だった。
そして
与えられたセリフの様に
淡々と言った。
「スキだったのにな…
スイカ…。」
そう言った後
黙りこんだ。
まるで自分の気配を消すように。
その姿は
まるでロウ人形だった。
そして、
黒い服の
やたら姿勢の良い男が
腕時計を気にしながら
時間通りに
式を進める。
悲しいくらいに
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