サヨナラ

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どこを、 どう歩いたのか…。 俺は、 駅前の噴水の前に立っていた。 勢いよく、 押し出された水は 冷たい空気の中で 砕け、 光を纏う。 そんな光景を目に映しながら 俺は、ただ ユウカの顔をボンヤリと 頭の中に巡らせる。 駅前の噴水。 そこにいたユウカの事は、 よく覚えていた。 一年半前に、 彼女は、 そこに立っていた。 泣きながら。 「やっぱりスキなの、 勝手なのは分かってる。」 泣きじゃくる彼女と、 俺はヨリを戻した。 理由も言わずに、 別れをきりだした 彼女と。 彼女の残像が まだ そこに居る。 ボンヤリ、 そんな事を、 考えていた、 俺の頭に、 声が、 飛び込んできた。 「お前の女、 妊娠してたんだ。 お前の子じゃない、 別の男の子供を… さぁ、これからどうする?」 前に、 天使が座っていた。 挑戦的に 笑ってさえいた。
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