0 一番大切な、思い出

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 それは僕がここに来る前の事。まだ皆の中に紛れて暮らそうとしていた頃の話。ほんの数年前の事だけど、遠い日の事のようにも思える。  その日は確か実習テストがあった日で、いつも通りかんばしくない成績をマークした僕はまあこんなものかと息をついた。  そんな僕をいきなり横から吹き飛ばしたのが彼女だった。 「そこに直れ!」  もちろん受け身なんてとれるわけがなくて、ごろごろ地面を転がった僕に彼女は仁王立ちでそう言って。  僕は突然の出来事とあまりの迫力にぽかんとしてた。だってそんな風にいきなり攻撃してくるなんて初めてだったから。 「お前だお前! いつもいっつもへらへらして努力もしようとしないで……」  彼女は珍しい、明るいピンク色の髪をポニーテールにしていて、何か言う度に揺れていた。
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