0 一番大切な、思い出

3/4
181人が本棚に入れています
本棚に追加
/311ページ
「ちょっとは何とかしようって思わないのか! お前も軍人を目指すなら……」  ものすごく注目されてるのに、彼女は気にしないで僕に向かって叫ぶ。そこで僕はようやく説教されているんだって気付いて、またきょとんとした。  だって初めてだったんだ。見知らぬ相手に説教するとか、そういう人に会うのが。そんなおせっかい焼きというか、面倒になりそうな事をしちゃうような人、初めてで。  僕に怒鳴るように説教を続ける彼女はとても輝いて見えて、とても素敵で、僕は急に彼女の事が気になった。  名前はなんて言うんだろう。同じ学年なのかな。クラスはどこだろう。好きな物は――  そんな事を考えていたから、彼女の言葉はあまり耳に入らなかった。それが今はもったいなく思う。 「分かったか!」  最後にそう言われて、僕はつい頷いていた。彼女は満足気に頷いて、きびすを返してどこかに行ってしまう。
/311ページ

最初のコメントを投稿しよう!