-1 異動命令

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 集合住宅の一室、玄関に押し込められた郵便の束を引き抜いて、少女は中に入っていった。カーテン越しに差し込む陽光以外、何も光源のない部屋に、スイッチを押す事で光をもたらす。  夕刊、ダイレクトメール、広告、そんないつも通りの日常に、世界連合軍の印が押された封筒が一通混じっていた。  少女はそれだけを机の上に置き、洗面所へと向かう。ヘアゴムを外すと桃色の髪がばさりと広がった。真新しい軍服を丁寧にハンガーにかけてから、脱いだ下着を洗濯機に突っ込む。  浴室に入り、熱いシャワーを頭から浴びる。八つ当たりをするように乱暴に体を洗い、髪を洗い、湯につかって温まる事もせず洗面所へと戻る。バスタオルで全身を拭く間、床に置かれたマットに雫が落ちた。
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