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雪山がある。
高い。それこそ、空に突き刺さっている、という表現が似合う山。
そんな山を登り、頂上に着くと、あまり広くない、いや、むしろ狭いくらいの白い地面に出る。
年中降り続ける雪のせいか、ただ単に高すぎるだけなのか、木はおろか、草一本もない。
だから、漆黒の空と、その空から降ってくる雪だけが、景色を支配していた。
そんな、絵にするならこれだけ面白くないところもないだろうこの場所に、たった一人だけ、人間が立っていた。
少年。
幼いといえば幼いし、大人だといえば違和感なく納得できる顔をしている。
彼のジーパンの裾は雪に埋もれて凍りつき、それよりも上は水を吸って紺色になっていた。
遠慮なく降ってくる雪に打たれている赤い袖なしの上着から見える黒い袖は、腕の半分も隠していない。
こちらも水を吸い、冷気にさらされてほとんど凍っていた。
そのほかつけているものといえば、デジタル式の腕時計と、黒いリストバンド、そしてわずかに雪が乗ったびしょ濡れの赤い帽子くらい。
少年は大きな黒い目で、左手に持った写真を見つめていた。
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