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やがて黄色い尻尾の先まで闇にとけて見えなくなると、表情を消して溜息をつく。口から飛び出した息は一瞬で白いもやとなり、上っていく。
それに導かれるように、少年は空を見上げた。
鼻やまぶたに雪が舞い落ち、解けて涙のように彼のほほを伝っていく。
しかし、彼はやはり一切の動きを止めて、むしろ雪に挑戦するよう空だけを見つめていた。
突然、無音の世界に腕時計の音が鳴り、午前零時を告げる。
十月二十一日から、十月二十二日へ。
すべてが生まれ、変化する。
彼の腕時計が刻む時間が、ゼロだった今日を埋めていく。
「様子だけでも、見に行ってあげようかな」
ぽつりと、彼はつぶやいた。
賛成する者も、反対する者もいない。ただ、風だけが、雪にまみれた茶色い髪をなでていくだけ。
そして少年は、空を見つめ続ける。
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