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実はジャズは慣れるまでが大変なだけらしい。 俺は16歳でジャズを始めた。それまではロックとクラシックだった。クラシックは置いておくにしても、ロックは先がだいたい読めるものだ。 しかし、ジャズはそういうわけにはいかない。バンドとしての一体感が大切だ。しかも、その一体感をソロパートでも必要とされる。行進をたくさんの人数で一緒にするとき一人だけ後ろ向きに歩いたりしてるのは、一見おかしいが、実は歩調が周囲とぴったり合っていると――― 「意外と不自然じゃないんだよな~・・・」 「お~い、どうした?アトム、なんか変だぜ?」 俺の名を呼んだのは、ドラムの仲原 卓(なかはら たく)だ。 「ア~ト~ム~、生きてるか~?」 「んぁ?おぅ、大丈夫だ。」 何故俺は今の絶好のタイミングでツッ込まなかったのだろう・・・と少し後悔。俺が生きてるのは当たり前だろうが・・・ 「何の考え事だったんだよ?」 卓は不思議そうに俺の顔を覗き込んできた。 「何でもねぇし。つーか、お前そんな趣味あったの?俺にキスするつもりか?」 「んなわけねぇし!俺はアトムじゃないから」 「やかましいわ」 軽めにツッ込んでおこう。悪いが、俺もそんな趣味はない。
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