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―――そう。 ICレコーダー、パソコン、マイク。 昼休みの音楽室。人の気配がしない。 「――ピッ、ピッ、ピッ」 ICレコーダーのカウントダウン音に続き、ピアノの和音が部屋に響き渡る。アンダンテのテンポ。ゆったりと、そして転調。 2分後、僕はほっとした表情でICレコーダーの録音を止める。すぐさまパソコンに繋いで、ファイルを保存し、また録音。 次はメロディー。パソコンにヘッドフォンを繋いで、伴奏のキーを聴きながら、即興で弾いてみる。コードはCが基本のよくありそうな感じ。わざとらしい位にゆるく且つダルい感じにする。 初めて親から買ってもらったジャズの楽譜には、「ソロの作り方」というページがあった。そこには、「ソロパートは考えながら弾くものじゃない」というアドバイス。僕はそのページを読んで、ひょっとしたら、ジャズのピアニストには神が降りてくるのではないかと思ったが、そういうわけでもなかった。 Adーlib(アドリブ)=自分の感じたままに音を自由に連ねていくことなのだ。決して、神が降りてきていたワケではなかった。でも、その事は弾かないと分からないものだった。 何も考えずに、ただただ適当に弾いたメロディー。アドリブの極意を少し感じた瞬間――僕のピアノは少しずつクラシックから外れはじめた。
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