第1話 鈴厘神社

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『その願いの根にある思いに気付く事を祈る』 悲しそうに顔を少しだけ歪めたその人の言葉は、やはり叶わない事を示しているようだ。 根にある思い? 思いなんてない。私はただ、またあの優しい笑顔が見れるなら、あの優しい声で私を呼んでくれるのなら……何もいらない。 『行くがよい。汝が必要とするモノのある所へ』 すっと腕を上げ、指を私に向ける。 「行く……?」 行くって何処へ? 疑問を呟くと、背中に受けていた風が不意に乱れた。 吹き乱れる風は鳴り響いていた鈴の音が一際、大きくなったと同時に一纏まりになって私にぶつかる。 「うわっ…!」 強い力に体がぐらつき、後ろに傾く。 やばい! 階段には手すりなどなく、バランスを崩した体を支える物は無い。 ここから落ちれば、まず助からない事は一瞬で理解する。 『鈴華の者よ…我は汝の近くで見守っている』 忘れるでないぞ、その言葉が最後に聞こえた。 既にその人は私の視界から消えて、代わりにみえるのは酷く澄みきった浅葱色の空。 足は階段から離れてしまい、体は宙に浮く中あまりに綺麗な空に思わず手を伸ばす。 そして、意識は途切れた。  
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