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鈴?どこから聞こえたのだろ?
辺りを見渡すが、それらしき物は見当たらない。
「那智?どないしたん?」
急に立ち止まった私を心配して紗季は顔を覗き込ませた。
「大丈夫。何でもないよ」
そう言って再び足を進め、紗季もそれに続く。
鈴の音なんて別に珍しくないし、きっと猫の首輪か何かだろう。
そう思うのにやけに鮮明に聞こえたからか、鈴の音が耳にこびりついて離れない。
釈然としないまま歩き続けると、ようやく私の住む昔ながらの家が見えてきた。
もう目と鼻の先。あと数歩で家の敷地を入る所に差し掛かった時、道の先にお婆さんが立ち往生しているのが見えた。足元には沢山の買い物袋がある。
「紗季。先に家入ってて」
それだけ言うと紗季は意味を理解したらしく、自分も行くと言う。
「すぐ戻るよ。それにアイス溶けるよ?」
自分が買ったアイスの存在を思い出すと、分かったと紗季は大人しく家の中へ入って行き私はお婆さんの元へと駆け寄った。
「お婆さん。どうしました?」
後ろから声をかけると、お婆さんは困り顔で振り向く。
「ああ、荷物が重くてねぇ。ちょっと休憩してたんよ」
安売りやったもんやからつい、とお婆さんは気恥ずかしげに訳を話してくれた。
「手伝いますよ」
私はお婆ちゃんと二人暮らしって事もあって、困っていそうな姿を見るとついこうやって声を掛けてしまう。
「ええの?ほな、頼みますわ」
助かるわ、と嬉しそうに笑って私の申し出を受けてくれた。
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