勇帝の誓い(前編)

3/36
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
 中央に備えられた大きな椅子に腰掛けるのは、赤を基本とした身体を持つ、機械仕掛けの巨人である。話を振られて、彼はその重々しい口を開いた。 『当然だ。その為の我々…勇者機兵隊だからな』  勇者機兵隊隊長、ルーンカイザー。機械の身でありながら人間と同じ、或いは人間以上に人間らしい感情を有する自立型機兵。  一同の信頼と尊敬の念を一身に受ける、勇者という肩書きに相応しい英雄。そんな彼はモニターに向き直ると、指示を待つ飛燕に向けて告げた。 『報告ご苦労だった、飛燕。こちらから至急増援を送るが、それまでは引き続き、情報収集を頼む。くれぐれも無茶はするなよ?』 『承知した……フッ、しかし無茶をするなとは、お前の言う台詞ではないな』  含み笑いを浮かべる飛燕に、やや憮然とした表情を浮かべるルーンカイザー。が、隊長としての意地なのか、取り乱すような真似はしない。  飛燕はその様子に苦笑を浮かべた後、通信を切った。  一瞬の静寂。しかし即座にそれは破られる。 『…聞いての通りだ。とりあえずこの場に居合わせた者は、アーク以外の全員が出撃だ。直ぐに準備に掛かれ、いいな?』 「「「「了解ッ!」」」」  号令の元、四人は返事を返すと同時、駆け出した。  全員が司令室を飛び出したのを見計らったところで、ルーンカイザーは腰を上げると、司令室の前方、エクセリオンの地上を見下ろせる窓際へと歩み寄った。 『…ハザード。遂に決着の時か…!』  窓に添えていた手を強く握り締め、ルーンカイザーは呟いた。冷たいボディのその内側に、滾るほどに熱い心を宿しながら。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!