勇帝の誓い(前編)

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「……ふむ。確かに回避も防御も不可能の、ある意味究極の兵器だが。しかし味方を巻き込む事態となったりすれば、それは問題ではないかと思うのだがね…?」 「おやおや、その説明は過去何度も繰り返したと記憶しているが…まぁ、問われた数だけ答えれば済む話か。ではもう一度答えようじゃないか」  トルナードの顔に、僅かな苛立ちの表情が浮かぶ。ハザードの言い回しが気に入らないようだが、相手が振り返って視線を合わせるタイミングで、完璧な愛想笑いを浮かべてみせる辺りは、実にしたたかであると言えた。 「結局のところ、この装置の用途は脅しでしかないよ。だが、世界を牛耳ることを引き合いに出すならば、やはり世界を揺るがす程の規模を誇る計画を有するしかないと、私は踏んだのさ」  勿論君の危惧した危険性に対する回答には足りないがね、と付け加えた上で、ハザードは言葉を続けた。 「だからこそ同時進行で、君が立案した計画も遂行しているではないか。機兵の自動生産施設の建造……我々の固有戦力の底上げを行うこのプロジェクトを主軸に置けば、むしろこの邪神の心臓をこそ、例えばあの勇者機兵隊の目を欺くための陽動にもなり得る……と」  これにはトルナードも素直に頷いた。 「全くもってその通り、ですな。私が主導した”カオスガーデン計画”を主軸に置くという考え、立案者としては嬉しい限りですとも。いざという時の戦力確保も兼ねた計画が成功すれば、これまでのように連中の妨害に屈し続ける必然も無くなるというもの」  その返答に、ハザードは口元を歪めた。本人なりの笑顔は、無表情に張り付いた仮面の笑みのようにしか見えなかったが、トルナードは気にした様子を見せない。少なくとも表面上は。
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