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庭園を見て、素直に美しいと思った。いくら教養のない俺でも、あの薔薇園はしっかり手入れされていると分かる程だ。
だが・・・
「・・・好きになれねぇな」
貴族共の趣味じゃ、そう心の中で毒づき薔薇園から目を離そうとした、その瞬間―――
薔薇園の中に一人の女が目に入った。
金色の髪を肩ほどまで伸ばした女は、白魚のような指で、深紅の薔薇を労るかの様に優しく触れていた。
「―――――っ」
その姿に息をすることも忘れ、思わず見惚れた。
艶やかな金色の髪も、雪の様な白い肌も、薔薇園の中では一層際立っている。
薔薇を慈しむかの様に微笑む横顔には気品が漂い、高貴な生まれであることは容易に想像がついた。
しかし、女の美しさの陰にはどことなく儚さが感じられ・・・
チクッ
「・・・ぃちょう?隊長!?」
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