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「隊長、どうしたんですか?ボーっとして」
「アンタの話がつまらなかったんじゃない?」
カズマが心配そうに顔を覗き込んでいた。そう言うミズキも怪訝そうに俺を見つめている。
俺は内心慌てながら体の向きをカズマに向けた。女に見惚れていたなんて知られたら恰好のネタにされちまう。
「いや、なんでもない。報告はそれだけか?」
「いえ・・・あと"総司令"が隊長に伝言を・・・」
"総司令"。その言葉に思わず反応した。
「"アイツ"が?」
「えぇ、なんでも・・・今日は全員本部に戻ってこい、と」
アジトに戻る、それはなかなかのリスクを伴ってくる。トウキョウから出るにはそれなりに時間がかかるし、アジトへの経路も発見されないよう動かなければならない。
それも三人で、だ
「・・・まぁいい。放課後は確実指定されたポイントに集まれ。以上だ」
「「了解」」
カズマが屋上を去ると、ミズキがこちらに寄ってきて、そっとキスを交わした。ミズキは満足げに屋上から出て行く。
(学園ではすんなってあれほど・・・)
はぁ、と溜め息をつき二人に続いて屋上から出る際、ちらっと薔薇園の方を見てみたが、既に先ほどの女はいなかった。
(所詮、貴族の女だ。自分の憎むべき仇だ)
そう言い聞かせる反面、体は春とは思えないほど火照り、胸の中にチクチクと違和感が残った。
何故だろう。その違和感が、少しだけ心地良く感じられるのは・・・
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