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チラッと、不審のない動作で二人に視線を送る。視界の隅でミズキは髪を払い、カズマは伊達メガネを外すのが見えた。
これは二人の了解の合図だ。
それを確認すると、俺はポケットの中から携帯型電話機を取り出し仲間に文章の無い空メールを送った。
10分後。
歩道を歩いていた俺の脇に、静かに一台の車が停まった。
誰かを確認することもせず、そのまま後部座席に乗り込む。分かっていたことだが、そこには既に先客がいた。
「お疲れヨシキ」
「お疲れ様です、隊長」
「あぁ、二人ともご苦労だった」
ふかふかのシートに腰を沈める。今日一日の疲れが癒される様だった。だらしなく体を投げ出したまま、運転手に発進の指示を出す。
ふと昼間の女生徒を思い出した。深紅の薔薇園の中で、輝きを放っていた気品のある美しい女のことを・・・
「何ぼーっとしてるの?」
隣に座っているミズキが覗き込みながら尋ねてきた。
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