「公衆電話」

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「公衆電話」

 [次は、〇〇バスターミナルです。お降りの方は…]  小学生だった僕は、母の買い物の付き添いで、バス内の帰り道の話。  バスは、ターミナルを出発し、すぐに信号に捕まった。  その日は、炎天下で、外を歩くと汗ばむくらいだった。バス内は涼しく、一番左後ろの席に座っていた。  信号の待ち時間が、長く感じた。  なぜか、僕は、ターミナルの隅にある公衆電話が、気になった。  髪の長い女がいた、電話中らしく、背中側しか見えていなかった。  バスがエンジンをかけた、信号が変わったらしい。  この間、公衆電話から、目を離したのは、1~2秒だった。 【…ギリ、…カリカリ】  外からの不愉快な音に、外を見た。  「ひっ!!!」  今、公衆電話で話をしていた女が、僕が座っている一番左後ろの席の横に。  外から、見ていた。  この女は違うと直感した。…あっち側だ。  あまりにも、おかしいと感じた。  僕と公衆電話までの距離は15~20mで、目を離したのも1~2秒、何よりも生きてるとは思えなかった。  僕は目を反らし、耳を塞いだ。 『もう少しだったのに!!』  この言葉の意味を、この後に知ることになる。  僕は、数珠をしていた。  残っていた数珠の数は2つ、それ以外には、ヒビが入っていた。 『もう少しだったのに!!』という言葉は、この事を言っていたのだろうか?
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