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「……何、あれ…」
目を疑った。驚いた事に、何もないと思っていた(現に何も見えなかった)真っ黒なその場所の僕が睨みつけた先にぽつんと一つ、寂しげな真っ白な建物が見えた。
そして、僕がその建物を認識した途端に建物から僕の足元まで闇を滑るように真っ白な道が伸びて来た。
「…これは、行くべきなのかな…?」
暫く、足元の白い道を眺めていたけれど、僕の青ざめてきた裸の足を視界に捉えれば急激に寒さが舞い戻ってきて、僕は身震いをする。
考えてる暇はない。
薄手のジャージしか身に着けていない僕はじきに凍えてしまうだろう。
僕は真っ直ぐ伸びたその白い道を駆け出した。
冷えた足は白い道に叩きつけられる度に跳ね上がるような痛みを突き付ける。
荒くなる息を白く濁らせながら、僕は全力で走った。
「早く、早くあの建物に…」
けれど僕が急がねばと足を運べば運ぶ程、建物は遠くなっていくように感じられた。
いや、やはりどんどん離れていってる。
僕は一旦立ち止まり、息を吸った。
そして冷たい空気に眉をしかめながら前を見る。
やっぱり、建物は離れていってしまっている。
さっきも遠く小さく見えたのに、今見たら更に小さく見える。
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