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このまま辿り着けないんじゃないか。
不安が焦燥へ変わり僕を襲う。
急がなきゃ。急かす気持ちと裏腹に、足は重い。寒さで体力が奪われてたらしい。
焦れったさに苛立ちながらゆっくり重い足を引きずる。
元々体育会系ではないけれど、ちょっとしか走っていないのにこの疲れはおかしい。
「本当に、此処は何処なんだよ…」
寒さと疲れと苛立ちが混ざった、憂鬱な声色で吐き出すように言う。
建物はまだまだ遠い。
どれ位歩いただろうか。
時間感覚が鈍り始めた僕にはわからないけれど、結構歩いたと思う。
憂鬱だと小さく呟いて、真っ直ぐ建物を見ていた視線を下へ移すと、一体の人形が転がっていた。
「…何コレ?…誰か、居るのかな」
僕はそっと人形を拾い上げる。
綺麗なブロンドの髪に黒いリボンを頭の後ろにつけて、真っ黒なドレスを着た赤い目のフランス人形(だと思う)。
こんな所に、人が居たのか。
この人形はどうしてここにあるのか。
疑問に思いながら眺めていると…
「…イ。エ…ルカ」
どこからか声がした。僕は勢い良く顔を上げてキョロキョロと見渡す。
そうしていると、また声が聞こえてきた。
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