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「死ンダ奴ハ皆最初ハ認メナイサ」
愉快そうに人形は言う。
僕の話に耳を貸そうともしてくれない。
人形に引きずられながら、僕は頭をフル回転させて考える。
…この人形の言うことが本当で、僕は実は死んでいるんじゃないか…
微妙な気持ちで記憶を辿る。
昨日の夜、僕は学校から帰って布団に入って…寝た。
そして朝目覚めたら此処に…
夜の間に何かあったのかと考えている内に、あんなに遠いと感じていたあの白い建物が、気がついたら目の前に迫っていて僕は感嘆の声をあげる。
「ホラ、中ニ入レヨ。アイツガ待ッテルゼ」
表情は汲み取れないが、にやついた声色で人形は建物を指差す。
怪訝に思いながら、僕は促されるままに綺麗に装飾された金のドアノブへ手を伸ばす。
そして僕の指先がドアノブに触れた途端、軋む音をたてて扉はゆっくりと開いた。
開いた扉の中は…見えない。
周りの外と同じような、呑み込まれそうな暗闇。
僕はそこの中に入る事に躊躇した。
此処に入ったら、本当に戻れなくなりそうな気がしたから…
助けを求めたくなった僕はゆっくりと振り返る。
さっきまで居た筈の人形はもう、居なくなっていた。
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