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――ろうとしたところで、私はドラゴンくんに尾ではたかれた。
「あべしっ! 痛いじゃないか!」
「さっきまでヤムル近くにいたのをわざわざネクロス城まで飛んだのに、またヤムルまで戻るとかふざけんな!」
「私はアルケイン将軍と違ってMじゃないんだぞ! ややSなんだ!!」
「まずネクロス城にいる他の将軍に断られてからアルケイン将軍に断られに行けよ、能率悪いったら無えなクソ!」
「でも、それが君の愛情表現なら私は……私は……」
「話聞けェェェ!!」
思いきり叫んだドラゴンくんは、つい力みすぎてしまったのか、まともにくらえば、それこそ相手を消し炭にできる炎まで私に向かって吐いてしまった。
「どっわぁ!?」
それをとっさに身をよじって避けると、炎はそのままネクロス城の壁から庭まで突き抜けて、偶然そちらの方向にあったアルケイン将軍の葡萄畑にまで届こうと――
「うっわヤバい!!」
慌て水の精霊・ウンディーネを召喚して、なんとか延焼は防いだが、アルケイン将軍の葡萄畑は見るも無惨な真っ黒焦げ。見事に――
「見事に焼き畑されたァァァ!!」
「そんなレベルじゃねえだろコレ。焼き尽く――いや、むしろ焼き潰す?」
絶叫する私に、ドラゴンくんはのほほんと他人事のように言葉を返す。
「城壊したうえに葡萄畑焼いたとか、減俸じゃすまされない……。私、殺されるかも……いや、ズバコロ確定……」
そんなことをブツブツ呟きながら、『アルケイン将軍配下軍の規則の2、葡萄畑はレディーよりも優しく大切に扱うこと。守れなかったら、分かってるよね☆』がぐるぐると脳内で回りだした私に、さすがに神妙な面持ちになったドラゴンくんは――
「何つうか……その……うん、死んでこい☆」
「まあ憎たらしいほどイイ笑顔ですこと!」
「俺はあくまで召喚獣だからな。召喚獣の不始末は、その主人である召喚士のおまえが責任取れよ!」
「私がボケのはずだったのにいつの間にか立場逆転したなコノヤロウ!!」
このようにわいわいぎゃんぎゃんと騒いでいると、私は不意に肩を叩かれた。
「――すみません。この葡萄畑が燃えたのはあなたがたのせいですか?」
「みぎゃーーーっ!!!」
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