ある日のネクロス上層部

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魔導帝国ネクロス筆頭将軍、アルエルゴ・V・アルケインは悩んでいた。彼が悩んでいる理由は―― 「アルケ――いえアル中閣下、献上品をお持ちしました! もちろんワインですよ!」 「それはありがとう。でも、なんで『アル中』って言い直したんですか?」 「アル中様、ワイン飲んでないで戦って下さい」 「良いじゃないですか、戦況は我々ネクロスの優勢なんですから」 「さもなきゃ、セラーのワイン割りますよ?」 「わあああ!? それはっ、それだけは絶対やっちゃダメェェェ!!」 「閣下ー! ズバコロさせて下さい!!」 「痛いから嫌で――こら! 仮にも上官に剣を向けない!」 彼が悩んでいる理由は、彼の部下達の自分への態度のことであった。 何故か近頃、アルケインは自分が部下達から軽んじられているような気がしてならなかった。 「正確に表すなら、『気がする』どころじゃないんですけどね……」 そして、深々とどこか芝居掛かった仕草でため息を一つ。 それに対して、苛々としているのを隠そうともしない鋭い舌打ちが一つ響く。 「――で、そのくだらない話をいつまで続けるつもりだ不死者」 それを放ったのは、同じくネクロスの将軍である最凶の魔導師・フェルトだ。彼女は一見するとただの幼い可愛らしい少女だが、その実は幾度も転生を繰り返している強力な魔女である。 「『くだらない話』はないでしょう? 僕はこんなにも悩んでるんですから!」 「俺は、お前に初めて会ったその日から、部下からそういう扱いを受けていると記憶しているが?」 「酷い!」 鼻で笑うフェルトに、わあっ! と大仰に両手で顔を覆って嘆いてみせたアルケインに向かい、上座から鋭い叱責の声が飛ぶ。 「うるさいぞアルケイン!」
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