ある日のネクロス上層部

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柳眉を逆立てて怒りを露にしているのは、魔導帝国ネクロスを治める若き帝王、ネフィリム・ニーベルエンドその人であった。 「だってネフィリム様!」 「だっても何もない。貴様、今は何をしている時か分かっているのか?」 まだ薄らと幼さの残る顔と、夜闇を集めて作られたかのような漆黒の長髪を持つネフィリムは、食い下がろうとしたアルケインの発言をばっさりと切り捨てる。 「今は軍議中だ。貴様が部下からどのような扱いを受けていようがどうでもいい。ていうかむしろ、もっとやられろ」 「非道!」 「……まーた始まった」 「本当、面白いですね」 二人の掛け合いに呆れてため息を吐いたのは、グラマラスな体に白衣姿のメリー・ザンドッド・メリーズ将軍――通称、メリーメリー将軍。堪えきれない様子でくすくす笑いを漏らしたのは、ベノア商会から派遣された仮面の女傭兵・ネメシスだ。 「そうかい? あたしは面倒なことになる気がするケドね」 「なんて言いつつ、結構あなたも楽しんでいるんじゃないですか?」 見透かした風に言うネメシスに、メリーメリーは右眉をちょいと上げて尋ねる。 「おや。アンタは、なんでまたそう思うんだい?」 その問いに対し、仮面の下でネメシスは笑うだけだった。 おもちゃを見つけた子供の様に、心底楽しげに笑う。 「……アンタ、何がそんなに面白いのさ」 一向に答えようとしないネメシスに、不思議そうにメリーメリーが再び問いかけると、漸くネメシスは口を開いた。 「あなたは、この国で唯一の人間の将軍です」 「何か話が噛み合ってないような気もするけど……。それで?」 「それでいて――――」 メリーメリーがネメシスに先を促すと同時、聞き慣れた音が会議室中に響いた。 ズバッ、コロコロコロ……。
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