ある日のネクロス上層部

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「ちょっとォォォ! いきなり何するんですか、ネフィリム様!」 「ふん!」 へそを曲げた若い帝王が、不死者の首をはねたのだ。 「あーもう! 掃除が大変だっていつも言ってるでしょう、ネフィリム陛下?」 「ならば、アルケインの部下にやらせればよかろう」 「メリーさん! 怒るべきところはそこじゃないです!」 「アンタもさっさと首を拾う! そこら中に赤ワインが飛び散ってるじゃないか」 「こんな血生臭いワイン嫌です!」 「……もう俺は帰るぞ。いい加減、時間の無駄だ」 「む! フェルト、軍議をサボる気か?」 「……先陣を切って軍議を脱線させた、おまえが言うか?」 ネメシスとの会話を打ち切り、つかつかとネフィリムに詰め寄るメリーメリーに、アルケインは悲痛そうに叫ぶが、あっけなく一蹴された。 これ以上この場にいても無駄と判断したフェルトは下がろうとして咎められ、ついには頭に手を当てて嘆息する。 それらを見て、ネメシスは笑う。 すっかり顔を覆い隠す仮面の下で、心底楽しげに笑う。 心優しい獣人の傭兵・ダイコクが全員の茶を持ってやって来るまで――いや、やって来ても決して収まることはないだろうが、それまで何も言わずに彼らの織り成す茶番劇を眺めていよう。 「……悪虐非道のネクロスの上層部が、こんな愉快な人達だなんて、誰が思ったでしょうね」 時折、不死者の悲鳴や魔法の飛び交う喧騒の中で彼女がぽつりと呟いた言葉は、はたしてこの場にいる者の耳に届いただろうか。 終
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