立派な魔法使い

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その騒動のせいで、 家や命は助かったものの、 バンクスは職を失った。 バンクスにとってそれは、 命を失ったと同じくらいに感じるだろう。 バンクスは、 魔法協会で働いていて その中でも 一番か二番に入るくらい偉い場所である 魔法教会『リスナ』に入っている。 バンクスは、強くて 優秀な男として 認められていた。 普通 50年勉強しても、 受かるか どうか分からない試験に通ったのだ。 それは、 凄い事だ。 でも、 そのネズミ騒動で、 バンクスは生徒に手を出したと言われ、 クビになった。 しかも 家は失ってないと言ったが、 形的には残っているという事だけ。 あの大きなお屋敷は、 魔法協会で働いてるからこそ、 提供されるもので、 働いてないのだから、 当たり前に没収された。 アイシャは 俺が何度も バンクスの為に説明をしたが、 納得していなくて、 バンクスをキリッと きつく睨むようになった。 そしてアイシャは 新たな師匠を探して 魔法協会に行った。 アイシャは最後に 俺にこう言った。 「ハルト君も、 一緒に行かないかな?」 その台詞を言われた時、 心が跳ね上がるように 嬉しかった。 そりゃ、 アイシャはちっちゃくて 可愛いし 一緒にいたいとは思う。 でも、 俺は断った。 「ごめん。 アイシャ。 俺は行かない。」 アイシャは 一瞬悲しそうな表情を見せると 「そっか。 うん。分かったよ! じゃあ、またね。」 と、 最後は笑顔で 俺達の前から 消えていった。 アイシャは やはり 最後までいい子だった。 今頃、 アイシャは新しい師匠に、 魔法を教えてもらってるんだろうな~。 俺は時々何故あの時、 誘いを断ったのか考える。 別に、 バンクスに同情したわけじゃない。 そりゃ、 可哀想だとは思うけど。 そうじゃない。 俺には、 この人しかいないと 思ったんだ。 この人についていけば、 いつか 立派な魔法使いに なれる気がしていたのだ。
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